小中学校講師の給料表を延伸

大阪府が55歳以降のすべての職員の昇級を停止したことに伴い、見直しを検討していた小中学校講師の給料表について、大阪府、大阪市、堺市の府内すべての任命権者が見直すことになりました。

19年11月の賃金団交の際には、給料表の延伸を回答しなかった堺市、大阪市が(組合ニュース655号参照)大阪府と同様に延伸することを明らかにしました。これによって、小中学校の講師も他の職員と同様に55歳までは初任給の決定(事実上の昇級)が行われることになります。

会計年度任用職員に関する団交 堺市教委

堺支部では、市教委からの呼びかけに応じて2018年の3月上旬に(ロの字型の机を囲んで)改正地公法に関わる勉強会を持っています。この勉強会では、市教委から、総務省が示した会計年度任用職員制度に関わる指針は教育現場に当てはめにくいところがあり、その部分をどう読み込んでいくかが課題である旨が表明され、組合からは、非常勤講師は会計年度任用職員制度になじまないので特別職のまま措くべきであり、勤務時間については(現行の「授業一コマ当たり単価」でなく)授業準備や評価に関わる時間をも含めた実態を反映させて規定すべきであると主張しています。教育現場にそぐわない総務省の「机上の空論」をどのように「使えるもの」にしていくか、非常勤講師の権利をいかにして保障していくか、交渉の原点はここにあります。

非常勤講師の勤務時間

非常勤講師の勤務時間については、50分授業・45分授業の前後に端数を加えた60分とする(=準備、評価をこの短い時間の中で済ます)との基本は3月の一次提案と変わりありませんが、今回、新たな項目として、年度当初に示す条件明示書に①必修研修、人事評価、成績評価等に要する時間②実験や実習の準備・後片付け等に要する時間を含めて明示するという提案をしてきました。これは府教委の提案にはない堺市独自のもので、勤務実態に少しでも近づけた時間設定をしようとするものとして一定の評価はできますが、講師個々の授業方針・形態を正確に反映させた条件明示書が確実に作成されるか、②に該当する講師は理科・家庭科だけを想定しているのか、それは妥当か、日々の授業に関わる準備・評価が60分以内に収まらないケースについて時間外手当の算出をどのようにするのか等々、まだまだ交渉を重ねる必要があります。

もう一つの大きな問題である「週当たりの勤務時間が15時間30分に満たない非常勤講師については期末手当を支給しない」については3月提案から一歩も前進がなく、3月27日に組合が提案した「週当たり勤務2日以上の講師に期末手当を支給するものとする」は無視されたままです。非常勤講師で週に15時間30分以上の授業を持っている者が果たして何人いるのか、3月交渉時に回答を求めたところ、(「おられないわけではありません」としながら)全200名中わずか10名ほどに過ぎないことが明かされました。これでは大多数を置き去りにしての制度改悪と言わざるを得ません。「15時間30分」という「ライン」は一日7時間45分勤務の2日分として設定されているわけですが(講師以外の非常勤職員においては大多数がクリアできるとのこと)、勤務形態が全く違う非常勤講師(=時間講師)にそのまま適用するには無理があります。

市教委は「日に一時間しか授業のない方もおられますし・・・」などと反論しますが、たとえば、週4時間の授業を日に一時間&4日にわたって割り振られる講師がいたとして、しかし、それは講師が希望してのことではなく学校の勝手な都合で非効率的な時間割を振ってくるわけで、講師の側としては「いい迷惑」でしかありません。それを無視して、「日に一時間だけ(の講師もいる)」を言いがかりにして期末手当不支給を正当化するのは図々しいというものです。おそらく、「雇ってやっている」という意識が市教委にはあるのでしょうが、実情は、非常勤講師がいなければ学校が回らないから「お願いして来ていただいている」わけです。総務省も「期末手当を支給しないこととする制度想定されるものではありますが、他の会計年度任用職員との権衡に十分留意してください」と言っているだけで、支給するな、とは言っていません。「も(ありうる)」というのは、例外という意味であって、決して「支給しない制度」が主ではありません。堺市教委の読解力が問われるところでしょう。

「各団体の実情、任用の実態等に合わせて、細部において異なる制度設計となることも差し支えありません」という総務省マニュアルの意をくみ取って、堺の教育現場に適合させるべく制度設計を図るよう強く要求し続けなければなりません。

労働条件の切り下げは許されない

その他、争点となった項目としては、講師以外の非常勤職員の現給保障問題と通勤手当の問題があります。そのうち部活指導員だけが現在の年収額を大幅に下回ってしまう点ついては引き続き「救済」方法を探っていく旨が表明されましたが、通勤手当については、週当たりの勤務日数が少ない(週3日未満)カウンセラー等には支給しないという当初の提案から動くことはなく、納得できる回答は得られませんでした。たとえ、週に1日でも2日でも勤務すればそれに要する交通費は当然生じるわけで、日数が少ないからと言って切り捨てられてよいわけはありません。粘り強く交渉を続けたいと思います。

さらに今回の修正提案で特筆すべきは、前回無給とされていた特別休暇のいくつか(病気休暇、育児時間等)については有給とする、という点ですが、ここでも「週15時間30分以上」という線引きが壁となり、ほとんどの非常勤講師については適用されない(講師以外の非常勤職員では週3日未満不適用)という問題がたちはだかります。これについても粘り強く交渉を続けたいと思います。

来年度4月からの施行まで残された時間はあまりありませんが、制度改定の項目は多岐にわたるうえ、まだ細部が詰め切れてないものもあります。少しでも良い方向に改善されるよう、交渉を重ねていきたいと思います。

会計年度任用職員制度

2020年4月から導入されるとする「会計年度任用職員」。教育合同も多くの自治体との交渉を行っている最中です。

期末手当

この新しい職の目玉とされるのが、地方自治法の改正により期末手当の支給が可能とされたことです。しかし、実態は支給要件として週あたり勤務15時間30分以上とする自治体が多いことです。また、月額給与を下げることによって年間支給額を現状のままとする自治体すら出てきています。これらは、財政不足を心配する自治体による勇み足です。そもそも、消費税引き上げに伴う地方交付税確保(地方消費税の引き上げによる交付税削減回避)のために、「非正規」公務員の処遇改善が図られたものです。期末手当支給による国からの財政措置が取られることは、制度導入の前提なのです。現在、組合が交渉を行っている自治体の中で月額給与の引き下げを示しているのは兵庫県のみです。

公募問題

「会計年度任用職員」の任用にあたっては、できる限り広く募集を行うことが望ましい、とされることかた多くの自治体が公募を行うとしています。また、再度の任用について公募によらずに行える回数(2回まで、つまり3年間)に制限をつけるなどと提案しています。このことは、「非正規」公務員の最も大きな問題である雇用不安をなんら解消するものではなく、さらに不安を生じさせるものです。また、公募の方法についても不確かなものです。現在、教育委員会が行っている「講師希望登録制度」がそれに代わるとしている自治体もあります。しかし、「講師希望登録制度」は求職者に登録をさせた後、どのように機能しているのか全くわからないことが問題です。

「任期の定めのない短時間勤務職員制度」は矛盾を解決するか

大阪府箕面市は、現行法では存在しない「任期の定めのない短時間勤務職員制度」を総務省に提案しています。現実問題として存在する短時間勤務の職(例として放課後児童支援員、支援教育介助員など)を行う有期の労働者が安定的に働ける制度です。しかし、新たな制度導入について総務省は現在のところ否定的です。学校現場には多様な職が存在しています。そしてそのほとんどが「非正規」です。労働契約法も適用除外である「非正規」公務員の不安定な雇用形態が「会計年度任用職員」への移行で助長されるようなことがあってはなりません。

講師問題

現在、大阪府では毎年約2,800人の教員の欠員があり、この欠員補充として常勤講師(いわゆる定数内講師)が雇われています。その他、病休代替、産育休代替などで約3,000人、教科調整や代替などで約4,000人の非常勤講師が雇われています。また、教育職以外にも臨時主事(事務職)、臨時技師など多くの「非正規」が学校現場に不可欠な存在して雇われています。

多くは「正規」と同様の仕事を担っているにもかかわらず、その待遇には多くの問題があります。教育合同は、結成以来、この講師問題に大きな力を注ぎ、成果を獲得し、問題点を明らかにして来ました。

雇用

 毎年度末、講師を不安にさらしているのが雇用の問題です。学校現場に欠かせない職として存在しているにもかかわらず、大阪府をはじめとする任命権者は、「任用」という言葉を逃げ言葉としてその責任を負いません。組合は、講師組合員の次年度の雇用について大阪府に団体交渉を行うことを要求してきました。2015年3月、組合が要求したこの団体交渉が義務的団交事項であることが最高裁で認められました。
しかし、大阪府は組合との団体交渉で講師組合員の雇用について回答を行いません。そのため、組合は新たな団体交渉拒否を問題として、現在も中央労働委員会、大阪府労働委員会に申し立てを行っています。
一方、毎年度、組合員たちの次年度の雇用に向けて、各市教委に交渉を申し入れ、講師組合員たちとともにたたかっています。労働者として使用者側にいいように扱われない、言うべきことはしっかりと言う、力が持てるのが組合です。

一日空白問題

 「3月31日か、4月1日かどちらを空けますか?」そのような不自然な問いかけをされたことはありませんか?大阪府をはじめとする任命権者は、講師の雇用期間の中に1日の空白期間を定めてきました。理由は、年度を超えて継続して雇用していると見られないため、と言うことです。この一日の空白によって、夏期一時金が減額されたり、社会保険が続かなかったり多くの不利益が講師には生じていました。
組合はこの無意味で法にも基づかない一日空白をやめるように要求し続けました。そして、地方公務員法改正に伴う各種通知などが出たこともあり、大阪府、大阪市、堺市が2019年度末に一日の空白を設けないことを決めました。2019年10月に更新される任用期間を必ず確認してください。この変更によって、退職金の支給、夏期一時金の100%支給などが始まります。また、社会保険も共済組合に一本化されます。手続きが混乱することも予想されるのでしっかりと確認しましょう。

非常勤講師

現在、大阪府で働く非常勤講師はコマあたりの報酬支払いとなっています。1コマの長さによって報酬額は異なりますが、基本的に授業のない夏期休業中や祝日などは無給となっています。また、勤務時間の管理もなく、テストの作成、評価、授業の準備など全てをコマあたりの報酬に含めています。その結果、多くの非常勤講師がタダ働きをさせられている実態があります。
組合は、このような実態に対して労働基準監督署への申告を行い、未払い賃金を支払わせてきました。
このように、労働基準監督署や労働委員会を活用して、組合は講師問題の矛盾とたたかってきました。しかし、2020年度導入予定の「会計年度任用職員」により、これら労働組合法を使った活動に大きな制限が出てきます。