公立学校で英語等外国語を教えるALT(Assistant Language Teacher, 外国語指導助手)の賃金・労働条件は各自治体によってさまざまであり、直接雇用もあれば英会話学校からの派遣もある。各学校では、日本人教員の「助手」として扱われていることが多く、ALTの語学指導力が生かされていないことも見受けられる。
またALTの地位は、地方公務員法3条3項3号に定められた特別職地方公務員とされているが、公務員は「任用」であって「契約」ではないということから、1年任期が終了すると理由もなく雇止めされることもある。そして、日本の裁判所はこれら外国人労働者に冷たく、その労働基本権を制限することに恥じらいを持っていない。
地方公務員法・地方自治法改正とALT
日本政府は2017年5月に地公法や地方自治法を改正し、2020年4月1日を改正法施行日にして、地方自治体に条例制定を指導している。地方自治体は、法改正が要請する会計年度任用職員制度設置に向け、関係労組に対して提案を始めた。そのなかでALTも会計年度任用職員に移行させるとしている。しかし、会計年度任用職員について英語による解説は全く行われていない。
ALTは蚊帳の外におかれたまま、改正法施行を迎えることになりかねない。民間会社からの派遣ALTに置き換える動きも生まれている。
そこで会計年度任用職員についての解説と、それへの対応方針を英語で説明する必要があることから、下記のレポートを掲載する。
ALT及び関係される方が参考にしていただければ幸いである。
How will the amendments of the Local Public Service Act
and Local Autonomy Act affect ALTs?
神戸市KATE
神戸市は英語教育に力を入れていたが、1995年阪神大震災による財政危機からKATE(神戸市ALT)を大量解雇した。KATEたちは組合に加入して解雇撤回闘争を行った。その結果、再雇用を勝ち取ったKATEたちは待遇改善・労働条件改善に取り組んできた。他方、神戸市はKATEの新規採用をストップして、JET(語学指導等を行う外国青年招致事業)に切り替えた。しかし、JETは外国現地採用でかつ最長3年しか勤務できないため、英語教育の面からも問題が指摘されている。
KATEも会計年度任用職員への移行が考えられており、組合は2019年7月から団交を開始した。
KATE 会計年度任用職員にかかわる団体交渉を成功裏に終結!!
2019年7月から開始された団体交渉は、2月5日に神戸市が組合の要求を一部受け入れる形で終結となった。
神戸市はKATEの会計年度任用職員への移行にかかわり、年額報酬の維持は早々と表明したものの、「公募制」を導入する予定であると組合に示した。KATEたちは、長年、神戸市の英語教育に深く関わってきたにもかかわらず、JETと同様に3年を上限とするような「公募制」を示したことに対して、組合はその検討を強く求めた。
2月5日、神戸市は検討の結果として、KATEたちが神戸市の英語教育に長年果たしてきた役割や現状の働きなどから、「公募制」の導入は断念し、現行どおりにKATE採用を行うことを回答した。同時にKATEの定年制導入についても検討をしていきたいと示したものの、神戸市の回答は組合員たちにとっても十分に納得のいく内容となった。
しかし、組合の要求が受け入れられなかったものとして、病気休暇の無給化がある。現状では、年20日の有給の病気休暇が規定されているが、20年度からは無給となる。
この変更は、大阪府NETでも同様に行われており組合は大阪府に抗議文を送った。新たな感染症が発生するなど、感染予防の観点からも有給の病気休暇は必須である。しかし、国の非常勤に準じて有給化はできないと神戸市が回答したように、地方公共団体独自の判断はできていない。